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昨今のコロナ禍、原油の高騰や円安など、企業にとって先行き不透明な時代となってきています。このような不透明で厳しい時代を生き抜くためには、今回は雇用調整の一つである早期退職制度に焦点を当ててみたいと思います。早期退職制度の概要、メリット・デメリット、注意点について私の見解も踏まえながら、解説していきます。
目次
早期退職制度とは、定年よりも早めに退職したい希望者を募集し、退職金に特別割増金を付けて支給する制度のことです。簡単に言うと、「少し多めの退職金を支払うから、早期退職しませんか?」という制度です。
そして、早期退職制度の内容は、あらかじめ就業規則や退職金規定などに明記しておきます。内容として、一定以上の年齢や勤続年数など、対象となる従業員を絞り込んでおくケースが一般的です。
企業が早期退職制度を導入するにあたり、メリットとデメリットが生じます。
●メリット
・メリット1:人件費削減
定年までの期間がある従業員が早期退職制度を利用することにより、企業側にとっては人件費を長期にわたり大幅削減できます。人件費削減による立て直しができるため、業績悪化が懸念される企業のみならず、大手企業や行政でも取り入れられています。
・メリット2:若返りによる組織の活性化
従業員の若返りが起き、組織の活性化を実現できるメリットもあります。
●デメリット
・デメリット1:短期的なコスト増加
早期退職制度の導入後、制度を利用する従業員の数によっては、退職金プラス優遇措置による上乗せ金額、有休の買い上げなどによる支出が生じます。想定人数を多めに設定し、対応できる資金を準備しておく必要があります。
・デメリット2:想定外の有能な人材流出
早期退職制度の規定内容によっては、有能な人材が退職してしまう可能性があります。あらかじめ、勤続年数や年齢、部署、職種などの制度適応条件を設定しておきましょう。
内閣府のHPには、早期退職募集制度の募集・割増措置が記載されているので参考にしてください。
早期退職制度の設置や運用時には、以下の点に注意しましょう。
●注意ポイント1:規定策定の必要性
早期退職制度の導入にあたり、就業規則への追記をはじめ、退職金規定など策定が必要となります。他社のマネや単なるインターネット情報ではなく、専門家を交えて作成を心掛けてください。
●注意ポイント2:有能な人材の流出に注意
早期退職制度の規定作成に関連して、有能な人材が退職しないよう、あまりにも有利な内容にしないようにバランスを心掛けてください。ただし、従業員からの希望を拒否することはできないので、強引な引き留めには留意してください。
●注意ポイント3:情報流出に注意
早期退職制度を利用して退職する従業員は、同業他社に転職する可能性があります。制度規定に記載するのはもちろんのこと、秘密保持契約書を提出していただくことが大切です。
●注意ポイント4:丁寧な説明で誤解を避ける
従業員から「会社の経営は大丈夫ですか?」「首切りにかかっているのか?」といった不信感を持たれないよう、早期退職制度を導入する意図を丁寧に説明することが大切です。
早期退職制度を導入する前に、規定の策定などには十分な時間をかける必要がありますので、専門家を交えてメリット・デメリットを把握して検討すると良いかと思います。少しでも参考になれば幸いです。
この記事を書いているのは・・・ 八重樫 一行(やえがし かずゆき)/特定社会保険労務士 ご相談はこちらから |